はじめに

2000年代初頭、インターネットとモバイル端末が普及したのをきっかけに、世界中の人々があらゆる情報にアクセスすることができるようになり、やがて居住する地域や国に関わらず、リアルタイムにいつでも、だれとでも、そのネットワークを介してつながることができるようになりました。

それは同時にグローバル経済の大きな発展を促し、指数関数的、飛躍的な規模の拡大を実現しました。

しかしながら、それらは先進諸国、発展途上国のうち急成長を実現した一部の新興国の政府、国際機関、超巨大民間企業らが主導する、ごく一部の対象に極端に偏った、名ばかりの、偽りの富の再分配でしかなく、益々国や地域間における格差を増長させ続けています。

それはつまり、例えば先進国と発展途上国のそれぞれに同じ能力、同じ職業の2人が存在したとして、その地域や属する国家、経済活動を支える法定通貨が何かによって、資本主義的な評価は残酷なまでの大きな差が生じることになりました。

もちろん、事前に自らが生まれる地域や国を選ぶことはできない。これでは、まるで選択肢のないルートボックスと同じです。

そんな中、2010年代に入り、ビットコインやイーサリアムに代表される、インターネットの次の技術的革新であるブロックチェーンテクノロジーが世界に登場しました。

居住する地域や国、人種、宗教、身分、家柄、学歴に依存すること無く、インターネット回線下で、特定のプログラムを実行さえすれば、それに応じた、一切格差のない報酬が支払われるその様を目の当たりにして、我々人類が直面している偽りの、富の再分配に対するアンチテーゼとなると確信しました。

しかしながら、プロブレムソリューションフィットは実現された一方で、この素晴らしい手段をいつでも、どこでも、だれでも、普段の生活の中に溶け込み、実際に活用できる方法が確立された訳ではありませんでした。

ブロックチェーンテクノロジーは新たなデジタル通貨、暗号資産として金銭的な価値を伴うユーティリティートークンなど決済や価値の交換を介するもの、また株券や債権の代替としてのセキュリティトークン、その発展型として派生、台頭するガバナンストークンによって成り立つサービス及びその運営体そのもの、あるいは代替が不可能な送信権が入った唯一無二のデータであり、デジタル上での証明や契約を介する役割を持ち、同時にそのデジタルデータそのものを資産ともし得るNFTを用いるものまで、多岐にわたる革新的な枠組みを次から次へと生み出しました。

特に2019年以降はレンディング、イールドファーミング、または流動性マイニングといったステーキングを軸としたDeFiサービスが一気に世界中の投資家から注目を集め、急速に市場が拡大したのは記憶に新しいところです。

ですが、これらは結局これまでと同じ、一部の持てる者の富を最大化する新たな逃避先の1つ、代替手段の1つにしかなり得ず、持たざる者への波及はあまり期待できず、今のままでは本質的な課題の解決には至らないと認識しました。

そしてついに、2021年、それまで熱狂的なファンを抱えながらキャズムを超えるための決定打を模索し続けていたNFTゲーム(ブロックチェーンゲーム)がついにその牙城を崩し始めたのを目の当たりにしました。プロブレムソリューションフィットからいよいよプロダクトマーケットフィットのフェーズへ移行したのです。その具体的な内容は後述しますが、これまでのコンピューターゲームの長い歴史の中で、「お金を払ってプレイする(Pay to Play)」ゲームから「無料でプレイする(Free to Play)」、そしてゲームは「プレイして稼ぐ(Play to Earn)」という新たな概念を生み出しました。

2020年以前もNFTゲームはユーザーがゲームをプレイすることによって収益を得ることができるものでしたが、その物理的、心理的ハードルが一気に下がり、主に東南アジアを中心に爆発的にユーザーが急増しました。その代表格となるタイトルは一時期、DAU(※1)が200万人を超えました。モバイルゲームの大型タイトルと比較するとまだまだその規模は小さいですが、取引金額は22億USドル(※1)にのぼり、ARPUは他のあらゆるゲームの100倍以上の規模まで伸びました。実際にフィリピンなど、発展途上国のユーザーはゲームをプレイすることによって、日々の生活を送る上で不自由がない程度の収益を得ることができるようになってきたのです。

「Pay to Play」はデベロッパーがそのゲーム体験を得るためのソフトウェアをプレイヤーに販売することによって収益を上げるモデル、「Free to Play」はデベロッパーが「基本無料」をフックにプレイヤーを大量に集め、プレイヤーヒエラルキーの上位者の承認欲求を満たす、あるいは時間を節約する方法をアイテム課金という形で提供することによって収益を得る一方向のビジネスモデルであるのに対して、「Play to Earn」はユーザー(プレイヤー、投資家)とデベロッパーの全ステークホルダーが相互に作用しながら、それぞれが収益を獲得し、そのエコシステム全体の富の総量(総資産)が増えていきます。そしてプラットフォーマーがその総資産の流通手数料を収益として得るというまったく新しいモデルです。

しかしながらステークホルダーであるプレイヤー、投資家、デベロッパー、およびプラットフォーマーのそれぞれにおいて、未だにさらなる規模の拡大、その持続可能性の面においては改善、改良の余地が多く点在しています。その結果としてその後トークンの価値が暴落し、この「Play to Earn」ムーブメントは一気に下火になってしまったのは記憶に新しいところです。

また、人々の基本的日常生活動作(BADL)をトラッキングし、それに対して収益が発生する、さまざまな「x to Earn」サービスが乱立し、中には一時期MAUが70万人(※2)を超えるサービスも誕生しましたが、それらも同じようにトークンの価値の暴落によって、大きな軌道修正を余儀なくされています。

なお、上記のタイトルやサービスに用いられるユーティリティー性を持つNFT以外にも、コレクタブル性に特化したものなど、さまざまな性格を持つNFTの流通規模も、特に2021年から世界中の著名なブランドや熱狂的なコミュニティに関連したものを中心に急拡大しました。 しかしながら、2022年1月には世界中でNFTの取引規模は172億ドルに達した(※3)以降は世界的なマーケット状況の変動もあり、停滞状況が続いています。

このような大きな変革期の中で私たちは、そのテクノロジーと優れた前例を参考としながら、今にわかに顕在化してきているニーズとそのムーブメント、その先に訪れるであろう、いや、理想とする世界を実現するための、まったく新しいメタバースプラットフォーム「AKIVERSE」を構築します。

それはスマートフォン1台とインターネット回線さえあれば、高価なパソコンも必要なく、暗号資産やブロックチェーンに触れたことがなくとも、今世界中の誰もが楽しんでいるゲームを始めとするコンテンツや体験、行動を行うのと同じように始めることができ、その結果に応じて報酬が得ることができます。

前述した優れた前例の課題を解決し、同時に、今現在リアルタイムで起き続けているテクノロジーのさらなる急激な進化、社会情勢や新たな価値観に迎合し、居住する地域や国、人種、宗教、身分、家柄、学歴、生活状況に関わらず、だれでも安全に参加できて、だれもが経済的価値を享受するだけでなく、自己実現を果たすことができる、すべての人たちのための、まったく新しい「拡張社会」となります。

次章以降の各論にて、AKIVERSE が描く世界観と、日々の生活の最初の接点となるゲームを軸としたさまざまな体験、およびそれに紐づく経済の形を記していきます。

(※1)ref The Lunacian (※2)ref Dune Analytics (※3)ref Dune Analytics

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